いろんなお仕事・バイト職業図鑑

ブラック仕事も儲かりそうな楽しい仕事もいろんなお仕事・バイトの体験記です。

キセル不正乗車の発見にクレーム対応・駅員の仕事も大変だ

鉄道会社はまずツブれる心配もないし、年功序列も結構。とに かくマトモな人になれれば御の字だ。果たして、私は競争率約 10倍の難関を突破して見事合格。

入社後2カ月間は研修専用の教習所で1日中ひたすら勉強。業務に必要な知識を叩き込まれた。 とはいえ、座っているだけでサラリーマンの平均月収くらいもらえるのだから、バイトとは雲泥の差だ。

その後、沿線の駅に配属されて1週間の実地研修。そこで私は、 厳しい現実を見ることになる。 配属先は、他線と交差する結構なターミナル駅だった。先輩の指導に付き添ってもらい24時間フッ通しで勤務するのだが、掃除や改札といった当たり前の業務はもちろん、とにかく接客がキツイ。 毎日何千、何万人もの人と接する 分、クレームの数がハンパじゃないのだ。 

「お釣りが出ない」 「電車が遅れてるじゃないかー」

まあこんなのはまだいい方で、 「なんでトイレがこっちのホームにないんだ」なんて怒鳴られても、 ただただ困るばかり。

また、当時は有人改札だったた め、入口の改札でパチパチ切って いると、3分に一度はそこから逆流して出よーっとする客がいた。

こういうときは一応、「お客さん、出口です」

なんて優しくするのだが、腹いせに切符の角で手を力リカリ突っ付いてく るヤツもいる始末

切符用のハサミで何度耳をパンチングしてやりたくなくなったか。 が、怒れば終わり。お客様第一主義である私鉄では、駅員は絶対に強く出られないのだ。

まったく、なんでここまで頭下げなきゃいげないんだ

私は、わ ずか数日の間で、かつて経験したことのない過剰なストレスに苛まれてしまった。 
新人駅員が改札の仕事に入り、 
最初に遭遇する犯罪それは、キセルだ。バッタバッタと不正乗車の犯人を捕まえられれば、さぞや快だろ-

ま、定期なら不正はまだ見つけやすい。区間や有効期限デカと書かれてあるし、次第にそれ を見分ける動体視カも身に付いて くる。たまに、使用済みの定期を かき集めてそれぞれの数字を都合 良く組みあわせて薄いブルーの定期入れで抜けていくような強者も いるが、全体数の中ではごくわずかだ。

問題は切符の方である。ご存じ のように有人改札の場合、客は使い終わった切符を駅の手元の箱に置いて抜けていく。が、特にラッシュ時の場ここで不正を見 つけるのは至難のワザだ。

証拠となるような防犯カメラもないし、キセルするようなヤツはたとえ指摘したところで 「やってねえ」と逆ギレすること も多い。追及して間違いだったら トンでもないことになるため、結局は見逃してしまいがちだ。 それでも、中には親の仇を討つ ように躍起になっでいる同僚も少なくない。

というのキセルが発覚、通常運賃の3倍嬢額を請求できる決まりになっており、発見した駅員に徴収額のー割が報奨 金として支払われるからだ。 この制度を利用して儲けよーっと 思ったら、やはり定期券に限るだ ろう。発覚時には不正乗車した日数分が丸々加算されるので、長くキセルしているほぐその分額が膨らむ。

いちばん有効なのは、一度不正を見つけた定期券の客をワザと見逃し、少し日数を稼いでおいて御用という戦法。

私も一 度だけ試したことがあるが、結局 は、名人と呼ばれている先輩に途中で横取りされてしまった。