いろんなお仕事・バイト職業図鑑

ブラック仕事も儲かりそうな楽しい仕事もいろんなお仕事・バイトの体験記です。

amazonの配達員は稼げるのか?給料は?

アマゾンで商品を買ったら、発送報告のメールに「この商品はAmazon
が発送します」と書かれていてガッカリ、という経験はないだろうか。
 
ヤマトや日本郵政など大手の宅配業者ではなく、あのデリバリープロバイダか…。
 
大手とちがって不愛想だし、仕事ぶりも適当で素人っぽい。あまつさえ指定した時
間に遅れることもよくあるし…。
 
テレビのニュースでも、商品を乱暴に扱
う姿が取り沙汰されていたけど、そもそも
あいつらっていったい何者なんだ?
 
そんな悪名高いデリバリープロバイダの
実態について、現役の配達員である加藤氏(仮名・
31才)に詳しく語っていただこう。


給料は歩合制で荷物を一つ運ぶ毎に150円
現在、31才の私は3年ほど前から、関東のとあるデリバリープロバイダ(以下・デリプロ)で働いている。
それまでは飲食店の店長をしていたが、あまりの激務に体調を崩し、転職せざるを得なかったのだ。

そんな人生のどん底の時期に求人サイトで見つけたのが、デリプロの求人である。
﹃アマゾンのルート配送ドライバー募集。
月給30万以上保証。50万も可能! 未経験者OK!﹄ものすごい好待遇である。
 

なにせ当時は今ほどデリプロについての悪評が一般には浸透しておらず、私自身アマゾンの配送の仕組みをよく理解していなかったのだ。
一応近所の大手宅配業者も転職先として検討はしてみたが、配達用の車が自前で必要だったり、ロイヤリティなる契約費用を請求されたので、却下。
デリプロなら金銭的なハードルなしで、身一つで働き始めることできたのだ。
さっそく、掲載された番号に連絡すると、その電話口で採用が決まり、翌々日には仕事の説明をするために出社してほしいとの返事をいただいた。

あまりのスムーズさに人手不足の業界なんだな、と感じたのを覚えている。
面接当日は何台かの軽バンが並ぶ倉庫のような場所で、社長直々にデリプロという業態について説明を受けた。
「平たく言えば、デリプロってのは、うちみたくアマゾンの荷物を配送する中小の運送屋のことね」

具体的には日本郵政クロネコヤマト、佐川急便、の大手3社以外の運送業者のことを総称してデリプロというそうだ。
2018年当時は、アマゾンの配送のうち約4割をデリプロが担っており、扱うのは主に当日便や翌日便など急ぎの荷物である。
そのため、配達にはかなりのスピードが要求されるので、これもデリプロの仕事が杜撰になる理由の一つだった。
「うちで働くドライバーは20人。彼らと手分けしてアマゾンの倉庫からきた荷物をこの辺りの地域に運んでもらうから」
 

早朝、アマゾンの巨大な倉庫(フルフィルメントセンター・FC と略される)から届いた荷物を、20人で手分けして担当地域に配達するとのことだ。
「最初は慣れないかもだけど、移動範囲が狭いから何日か働けばルートを完璧に覚えられるし、かなり稼げるはずだよ!」
佐川やヤマトに比べて、アマゾンの商品だけを運ぶデリプロは、一般家庭が主な配達先なので、住宅街に配送ルートが限定されており、社長曰く「比較的ラク」とのこと。
「給料は歩合制と固定制どっちか選べるんだけど、試用期間中の3カ月は日当1万2千円で固定ね」
歩合制の場合、荷物を一つ運ぶ毎に150円。つまり月給30万以上稼ぐには、1カ
月に2千個、土日を休んだとしたら1日に最低でも100個配達しなきゃならんわけ
だ。途方もない数である。
固定制の場合はどれだけ数が多かろうが少なかろうが日当は1万5千円。
つまり仕事に慣れて1日100個以上配れるまでは固定で、数をこなせるようになったら歩合に変更、というパターンが正解のようだ。
「ただ注意して欲しいのが、社員じゃなくて業務委託だからそこんとこよろしくね!」
 

かくしてデリプロドライバーの一員となったわけだが、察しのいい方ならお気づきのとおり、この時点で社長はメリットばかり語っていて、デメリットを濁している。
例えば求人に書かれている月収30万保証。
たしかに固定給の日当1万5千円で20日働けば月収30万はもらえる。
しかし、業務委託契約なので、配達用の車のリース代、ガソリン代、仕事で着る洋服、保険その他諸々の経費は、こっち持ちだ。
そのため30万の月収があったとしても、実際の手取りはガタンと落ちて20万円前後となってしまう。これがカラクリである。
まあ、このときは転職が上手くいった喜びでそんなこと考えてもいなかったのだが…。
あれじゃバックミラー見えないだろうな…
 

さて、初日の仕事である。
 朝7時に配送センターを訪れて、他のメンバーに挨拶をする。
 だいたい20代後半から40代半ばくらいの年齢層。みんなボーっとしてなんとも無気力な感じだ。運送屋だから体育会系な雰囲気かと思っていたが拍子抜けである。
 そこに面接をしてくれた社長がやってきた。
「あっ、加藤君の車はこれね。あとこれが端末と携帯。一応ルートの地図も持っておいて!」
 大した説明もなく、いきなり配達をさせられることになった。急すぎるよ!
「そこに荷物がまとまってるから、じゃあ後はよろしく!」
 一列に並ぶ軽自動車の前には、おなじみアマゾンのスマイルロゴが描かれた段ボールがこれでもかと並んでいる。すでに担当ルート毎に荷物が分けられているようだ。
 これを積んでいけばいいのか?
アタフタしてる私を見かねて、となりでバンバン猛スピードで荷物を積み込む中年のオッチャンが声をかけてくれた。

「おい、大丈夫か?」
「…は、はい。ここにあるのを積めばいいんですよね?」
「あとで楽なように、ロッパチとかシチクが奥で、ゴゼンを手前に入れときな!」
 は? 何語ですか?
「時間指定だよ! 夜の7時から9時の配達がシチク!」
 なるほど、じゃあ6時から8時がロッパチ、午前中の配達がゴゼンだな。
 どうやら時間指定がある荷物とない荷物の両方を一緒くたに配っていくみたいだ。
「時間指定があるのを中心にルートを組み立てて、それに合わせて時間指定がないのを取り出しやすい所に置いておきな」
 ルートと言われてもいきなりじゃ頭がパンクしてしまう。新人にそこまで求めるの
は酷である。
なんとか言われたとおりに軽バンに積み込んでいき、40分以上かけて完了。
車内には約100個の段ボールがうず高く積まれているが、これでも初日なので数は少な目にしてくれたみたいだ。
隣の軽バンのオッチャンは車内ギチギチに段ボールが積んであるし、あれじゃバックミラー見えないだろうな…。
さあ、いざ配送に出発だ。
車に乗り込む間際、オッチャンが声をかけてくれた。
「まあ、最初は大変だろうけど、頑張りなよ」
 新人に大した説明もせず、いきなり仕事を任せるって、どうなんだよ…。
午前中に指定したんだから家にいてくれよ!
配達の開始時刻は午前8時。これより早く始めるとクレームが来るので、時間ピッタリを守らなくてはならない。
さっそく配送センターから車で20分ほどの場所に赴き、午前中指定の一軒家の前に車を停める。
ハッチバックを開けて段ボールをつかむ。
玄関のチャイムを鳴らすと、インターホンから女性の声が聞こえてきた。
「はーい。どちら様ですか?」
「アマゾンです~! お荷物お届けに参りました」
「はいはい。ちょっと待っててください」
 玄関からハタチ前後の若い女性が現れた。女子大生かしら?
「こちらにサインをお願いしま~す」
ボールペンを差し出して書いてもらい、ピッと端末でバーコードを読み込んで、荷物をお渡しする。
これで記念すべき1軒目が終了。時間にすれば30 秒ってところか。
次のお宅は近いので、同じ場所に車を停めたまま、小走りで向かう。
 ピンポーン。ピンポーン。
 あれ? 出ない…。
仕方ないので不在連絡票を記入し、郵便受けに突っ込む。午前中に指定したんだから、家にいてくれよ…。
地図を頼りに次の場所へ。午前中指定の荷物を中心に配っていると、朝に渡された携帯が鳴った。
うざったいなあ。車を路肩に寄せて電話に出る。
「はい。アマゾンです」
「もしもし、不在連絡票入ってたんだけど、これから来れる?」
さっき、不在票を入れた家だ。かなり遠くに来てしまったので、すぐに向かうのは難しい。それにルートが崩れて大幅な時間のロスになっちゃうし。
「えーと、夕方でしたらそちら伺えますよ」
「は? 夕方? チっ、午前中に指定してんだから、スグに来いよ」
 いや、午前中にいなかったのはそっちでしょ!
「申し訳ございませんが、それは難しいす」
「ああ、じゃあ、夕方に頼むわ」
 こんな風に、指定した時間内であれば、いつでも届けることができると勘違いして
る方が、結構いらっしゃる。まあ、イラつく気持ちはわかるけど。

その後も慣れない運転と配達を繰り返し、とりあえず午前中指定の分は配り終えた。しかし全部でまだ15個くらいしか配れていない。ヤバイなあ。100個もあるのに…。
 と、ここで再び携帯が鳴った。社長である。
「もしもし、加藤君? 大丈夫か?」
「やっと午前中指定を配り終えたところです。けどまだ全部で15個くらいで…」
「そりゃかなり遅いな…。昼便は取りに来なくていいから。もうちっとスピード上げないと後々ツライぞ。未配(次の日に持ち越すこと)はなるべく減らせよ!」
 本来であれば、午前中にセンターに届けられた、昼便の荷物を取りに行く必要があるのだが、初日だったので免除してもらえた。
昼メシ食ってる時間はないので空腹の身体にムチを打って作業開始だ。腹減ったよ~。
お届け、不在、電話、移動といったサイクルを何十回と繰り返すうちに日が暮れていく。
急がなくてはいけないので、ロクにシートベルトもつけずに無我夢中で配達する。ところが急いだせいで誤配を連発し、ますます時間をロスしてしまった。
 夜の20時を過ぎても全然配り終わらない。
するとまたもや社長から電話が入った。
「おい加藤、一回センターに戻ってこい!」
 言われるがままセンターに戻ると、そこには他の同僚たちの姿が。
「お前の未配を手分けして配るからよこしな」
 明らかに不機嫌な彼らに段ボールを渡す。
うう、すみません。
 かくして勤務初日は終了。結局初日で配れたのはたったの60個だった。
 自宅に帰ったのは深夜の23時。1日中小走りしてたのでふくらはぎが筋肉痛だ。
当然翌日の出勤も朝7時。あまりにもキツかったので、翌日バックレようかとも考えていた。デリプロの仕事は、新人もベテランも一日の作業内容自体に特別な違いはない。
 しかし、仕事を続けているうち、いかに効率的に早く荷物を配るか、そして未配を減らすか、という技術が上達していく。
配達できる数を増やせば増やすほど、それに比例して収入が増えるのだから当然である。なので配達員ごとに裏技というか、荒技が存在する。
 例えば私がよくやっていたのが、本や小物が入った薄い段ボールを、郵便受けに無理矢理にでも突っ込むという荒技。
多少段ボールがつぶれたとしても、アマゾン特有の過剰包装で、中の商品には傷がつくことはメッタにないので大丈夫。
ポストの入り口に入らない場合は、裏からトビラを開けてでもネジ込んでいた。これができるだけで、抜群に効率的になるのだ。
 他の荒技にはこんなのもある。
担当ルートに、エレベータなしの5階建ての団地が10棟ほどあり、荷物を届けるたびに、歩いて昇らなくてはいけなかった。
しかも、プライムデーというアマゾンのセールで安くなった水や炭酸水の注文があったらもう最悪。
荷物を持って5階まで上がり、不在だったら、持って降り、時間を空けてまた再度…という地獄のようなケースまで頻発するのだ。
なので私の場合、部屋にいるかどうかを、いちいち上まで昇って確認せず、1階のポストに不在連絡票を入れておいて、向こうから電話がかかってきたら、在宅時間を聞いて届けるという荒技をしていた。
「チャイムが鳴ってないのに不在票が入っていた」とクレームが来ても、自分は押したの一点張りで突き通す。古い団地でインターホンにカメラがついてない場合のみ通用する荒技だ。
これをお読みになって疑問に思う方もいるだろう、なんでそんな無茶ができるか、と。
 それはひとえにデリプロを相手にクレームを入れるのが面倒という理由がある。
例えば、ヤマトや佐川のような大手であれば、ホームページを検索し問い合わせ窓口にクレームを入れれば、当日のうちに直接ドライバーに連絡が入る。
 しかし、デリプロはアマゾンのサイトを開いて問い合わせフォームからメールを送り、文字でのやり取りを経由してから、ようやくデリプロに連絡がいく。
 つまり数日のタイムラグがあるのだ。
 なのでクレームを入れる絶対数が少ないし、アマゾン側もクレームは日常茶飯事なので、契約解除をするほど大袈裟に騒いだりはしないのである。

突っ伏してなかったら激突して死んでたよ
このように会社側からの要請や規則、コンプラはあってないようなものだし、それに加えて同僚もヤバイ奴揃いだった。
改めて説明すると、デリプロに入社する人は、私のような素人の未経験者、素行の悪い元運送業者、他のデリプロからの移籍組、が主である。
素人は仕事に慣れてないだけなので特別な害はないが、他の宅配業者からの移籍組はスネに傷がある奴らばかりだった。配達中に人身事故を起こした奴とか、代金引換の金を横領してクビになった奴とか、デリプロはそういう人の再就職先になっているのだ。
ドライバー同士はお互いに干渉することは少ないのだが、以前、珍しく開催された飲み会で、こんな話題になった。
「なあ、今までで一番のヒヤリハット体験談を出し合おうぜ」
仕事で車を扱う人間のすべきことではないのはわかりきってるが、こういう下品な話題が盛り上がるのだ。
私が披露したのは、猛烈な睡魔に襲われて、一瞬記憶が飛んだという話。しかし、その程度のレベルは誰もが経験しているようだった。
「睡魔だったら俺もあるよ」
 そう言って語り始めたのは40代のオッチャンドライバーだ。
「12月の繁忙期に20連勤しててさ。その日も夜10時くらいまで配ってて、体力の限界がきたのよ。で、運転中に気が付いたら意識が飛んじゃって、プーーっていう音で目を覚ましたんだよ。なにかと思ったら、俺なぜかハンドルに腕を突っ伏してたみたいで、自分の手でクラクションを押してたんだよ。寝ながら。その音で意識が戻って、なんとか事なきを得たんだよな…」
 突っ伏してなかったら激突して死んでたよ、と苦笑いしながら語るオッチャン。怖すぎるだろ!
﹁美人の住所を全部メモってあるんだよ﹂
 他にも同僚にはとびきりの変態がいた。そいつの名前は竹内。
 何がヤバイっていきなりこんなことを言ってきたのだ。
「俺の美人マップ見る?」
差し出されたスマホには、女性の名前、推定年齢、住所、在宅時間、電話番号が詳細に記されていた。
「…へー、これどうしたんですか?」
「配達先の美人の住所を全部メモってあるんだよ。なんかあったときのためにさ」
「なんかあったとき」ってなんだよ!
 ご丁寧に住所ごとにグーグルマップに印までつけてあるし…。気持ち悪い…。

しかし、なんで電話番号がわかるんだろう?
「ああ、それは簡単。あえて在宅してない時間に不在票を入れて、相手に電話させるんだよ」
ドライバーに直接電話がかかってくれば番号を控えられるんだと、自慢げに語る竹内。
「休みの日には、この美人マップを頼りに、散歩するのが趣味なんだよね」
大手とちがってコンプラ意識が低い上に、容易に客の個人情報を仕入れることができてしまうんだから困ったものだ。
こんなキモい男に電話番号を知られてたくない方は、ドライバーに直接電話するのではなく、ウェブで再配達を依頼するか、コンビニで荷物を受け取るようにしましょう。
 こいつ近いうちに逮捕されると思う。マジで。
★最後にコロナ以降のデリプロ事情についてお話しよう。
 まず、2020年3月以降、置き配や宅配ボックスが増えてきたことで、めちゃくちゃ配達が楽になった。
しかも、巣ごもり需要で荷物の数が増えているので収入も上がっている。
 現在の1日の配達個数は平均160個ほど。歩合制の月収は45万ほどで、手取りも増えて30万前後くらいになっている。
 とまあ一見、順調に見えるが実際はそうでもない。
 現在アマゾンはデリプロを介さず、直接個人のドライバーと契約する、アマゾンフレックスというシステムを導入し始めている。
 これによりデリプロの数が減っており、このままでは危ない状況なのは間違いない。私自身、アマゾンフレックスへの鞍替えを検討中だ。
だがそうなるとアマゾンの一存で単価が上下したり、急な契約内容の変更を強要される可能性があり、これ以上の激務になるかもしれないので、決めあぐねている最中だ。